
第6回 修行編 Part3 マスターとタンドールと
もう定例の書き出しになりますが、かなり久しぶりの更新でございます。
いまだチェックしてくれている、心のひろーい方はいるんだろうか・・と思いつつ、修行編続きです。
先日、東京カリー番長の水野さんが久しぶりに顔を出してくれました。
なにやらまたしても新しい企画のお話。
ふむふむと聞く。
どうやら水野さんは今、日本にインド料理を伝える、日・本・人・のシェフを、取材してらっしゃるとのこと。
それならばうちの師匠がいるじゃないですか!!
というわけで、その場で少し、シュプラのマスターとタンドールについてお話させていただきました。(水野さんは自宅にタンドールを作ってしまった珍しい人です!!)
そう、シュプラは本格インド料理店です。
マスターは今から30年以上前の若い頃、何度もインドに足を運び、現地の料理を勉強しています。
店名のシュプラはマスターに料理を教えてくれた女性の名前です。
シュプラにはカレーの他にもたくさんのインド料理のメニューがあり、
もちろん厨房には立派なタンドールが存在します。
あのおいしいナンやチキンをたった数分で焼いてしまう魔法のような釜、タンドールは、ものすごく贅沢に炭を使います。
毎日、毎日、炭を足して、火を絶やさないようにします。
ところで、タンドールの釜に手を入れたことありますか?
はーい、はーい、私ありまーす!
はい。
シュプラではナンを手で伸ばして、そのままの勢いでペタっと釜の内側に貼り付けます。(伸ばすイメージはピザ職人さんがやってる、あの感じに近いです)。
これがですね、ものすんごい熱いですよ。
マスカラなんてしてようもんなら顔を近づけた瞬間に溶けます。
荒れた手を突っ込むのは拷問に近いです。
そしてこのタンドールってやつは、温度調節がすっごく難しい。
高すぎると中まで火が通らないし、低すぎるとくっつかなかったり、表面がパリっとならなかったりするので、蓋を開け閉めして温度調節します。
分かりやすく、今焼き頃でーす!って言ってくれればいいんですけどね。
タンドール君は決してそんなこと言いません。
まあ、面倒くさいヤローなわけです。
で・も。
いい仕事するんですよね。
ん?誰かに似てますね。
炭の釜で焼いたナンもチキンも本当に美味しいですから。
だからしょうがない。
だから黙ってついてこいと言われれば、従うしかない。
んん??益々誰かに似てますね。
と、それはおいといて。
修業中、私が失敗したナンの枚数は何十枚じゃきかないはずです。
ある日、マスターに何度も何度も駄目だしされて。
あまりの悔しさで、わたし全部食べますから!って言ってみましたよ。
おーそうしろ、と言われましたよ。
食べましたよ。
食べきれませんよ。
あんまり無理すんな・・・とマスター。
・・・・・・・・。わたし。
持って帰りますからっ。
それでも両手で抱えるほどですよ。
無駄な意地ははるものじゃないですね。
そんなマスターと、
じゃなくて。
タンドールとの壮絶な戦いの日々は、一応焼き上がりにOKをもらった後も終わることはなかったのでありました。
マスターの仕上げるカレーとわたしが焼くナンと。
タイミングが早すぎれば、こんな冷めたナン使えねぇ!と投げられ。
遅すぎれば、カレーが・・・あぁぁ・・・。
なんてこともありました。
そうですよ、全てが熱々で初めてシュプラのカレーなんですから。
そうですよ、ね、マスター。
真冬、手荒れが酷すぎて、ナンを焼くのが本当に嫌になった時期がありました。
もろに顔に出てたんですね。
でもその時のマスターはいつもみたいに怒らなかったです。
嫌ならもういいぞ、と。
・・・・・・・。
いえ、絶対やります!やらせてください!
こうして、無事に修行生活最後の日まで、わたしはタンドールの前に立たせてもらうことができました。
意地はやっぱり、はってみるものかもしれません、ね。
あ、ちなみにライオンシェアにナンがないのは、修業時代のトラウマってわけでは、決してありません。
みなさん、魂の籠もったナンを食べに、ぜひ松本へ。
最後に。
タンドール君へ
寒い寒い冬の朝、厨房に入り、一目散に君に向かい、ピタっとカラダを貼り付けて数秒。
その温もりは今も忘れません。
色々とお世話になりました。
次回、そろそろ修行編完結します。
不定期コラム「ライオンシェア誕生まで」
第1回 入門編
第2回 修行編、その前に・・・
第3回 修行編 part1
第4回 番外編、ガングロ・・その訳は
第5回 修行編 part2
第6回 修行編 Part3 マスターとタンドールと
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